−谷 あつこの 会いたい、聞きたい&食べたい−

柳 正司さん

Tadashi Yanagi
やなぎ・ただし 
1954年群馬生まれ。 「銀座三笠会館」製菓部門、「ピュイ・ ダムール」等を経て、フランス料理店 「クレッセント」のシェフパティシェに。 95年の「クープ・ド・モンド」準優勝。 98年、神奈川県海老名市に「パティスリー タダシヤナギ」をオープン。 現在、海老名店のほか、東京・目黒、新宿高島屋パティシェリアに出店中。
07年1月開催の「クープ・ド・モンド」 では日本代表の団長・審査員を務めた。

 

●06年11月号   
 柳 正司(下)
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もっともっと上のおいしさへ



3年くらい前だったか、平原綾香の「ジュピター(木星)」を初めて聴いたときは、ちょっとした衝撃だった。
彼女の広がりのある歌声や独特のブレスも新鮮だったが、昔から聴いていたホルストの曲に、時代を超えて歌詞が付き、歌われたことが何より驚きだった。
そして、こういうこともできるのかと感心したものだ。

珍しかった真っ黒なスイーツ

 この歌より2年ほど早く生まれた柳シェフのスイーツに、偶然にも同じ名前のついた「ジュピター」がある。
つややかなチョコレートでグラサージュ(コーティングすること)した丸形のそれは、宇宙空間をイメージして作ったそうだが、なるほどクールで神秘的 なデザインをしている。

「クレッセント時代のオリジナルスイーツ“アンペリアル”が原形になっているのですが、自分の店をはじめた当初は、日本ではまだこういう真っ黒な スイーツが少なかったので、当時は出しても果たして売れるか心配で、2年ほど待った末にようやく出した、思い出のスイーツでもあるんです」

売り出してみれば、そんな心配をよそに、ひときわ目を引く色とデザイン、そして何よりもその味でリピーターが増えていった。さまざまなスイーツ取 材でも紹介され、やがて“柳シェフのスペシャリテ“ともいわれるスイーツになった。

見かけは濃厚なチョコレートケーキに見えるが、実は内側はチョコレートムースとスポンジ、中心部は紅茶のクレームブリュレになっており、食べる と意外なくらい軽い味わいだ。

「そうですね。チョコレートと紅茶の香りのマリアージュや、見た目の重さと食べたときの軽さのギャップも楽しんでいただければ、と思っています」

このスイーツの難しいところは、なんといっても紅茶の香りが抜けやすいこと。だからクレームブリュレの鮮度には非常に気を使うという。
さらに、同じメーカーの茶葉を使用していても、場合によっては微妙に香りが足りないこともあるため、定期的に試食を繰り返して味を確認し、そのつど調整する ようにしているそうだ。

「もうこれでいいと思わず、これからも常に改良していって、もっともっと上のおいしさを目指したいですね」

三重のグラサージュに初挑戦

もう一つ知っておきたいのが、このスイーツ上面のグラサージュのことだ。
チョコレートの黒いグラサージュの上には、白い線状の模様と白い丸型のグラサージュを点々とたらし、さらにその上には透明のグラサージュを絞り込 んである。

少々専門的な話になるが、グラサージュを3種類重ねる手法は、当時誰もやっていなかったとか。けれどもこうしたからこそ、立体感と奥行きが出て、 ジュピターのイメージどおりに仕上がった。

ことさら難しい手法ではないというが、クラシックの曲に歌詞を付けて歌ったジュピター同様、“コロンブスの卵”だと思う。最初にそれを思いつくのはやっぱり難しい。
発想力も実力もあったからこそ、ヒットするものが生まれたのではないだろうか。

●食べてみました
食べたとたん、軽さとまろやかさのうれしい裏切りに あう。アールグレイの香り もふわっと広がる。チョコ レートムースと紅茶のブリ ュレのマッチングを楽しむ ためにも、放射状にフォー クを入れて食べてほしい。 ああ、今日も幸せ。 ジュピター472円

●お取り寄せ情報
チョコレートの生地に、くだいたクルミが たっぷり入り、ほろっとした食感が人気の クッキー「ブール・ド・ネージュ」や、マ シュマロの概念が変わるギ・モーヴ、ル・ キイチ、ガトー・バスクなどの焼き菓子を セットにしたもの。
焼き菓子詰め合わせ/3,612円(消費 税・箱代込み、送料別)
※焼き菓子は自由に詰め合わせ可。
※スイーツの価格その他の情報は、掲載時のものですので、変更になっている可能性があります。 おそれいりますが、直接お店にお問い合わせください。
●パティスリー タダシヤナギ
東京都目黒区八雲2-8-11
Tel:03-5731-9477  
Fax:03-5731-9478
〔営〕10:00〜19:00
〔休〕水曜日
(上記は05年にオープンした八雲店。神奈川県海老名市ではマルイファミリー海老名店のみで営業中。もともとの本店(海老名市国分寺台)は現在アトリエとして製造のみを行っている)

撮影:岡山寛司  企画・取材・文:谷 あつこ(at food食プランナー)
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