−谷 あつこの 会いたい、聞きたい&食べたい−

辻口博啓さん

Hironobu Tsujiguchi
つじぐち・ひろのぶ 
1967年石川生まれ。18歳より都内のフランス菓子店やフランスのラングドック地方、セット市のパティスリー・ベルダンで修業。その間、各種洋菓子コンクールや世界大会に出場し、3度世界を制す。現在は東京・自由が丘のパティスリー「モンサンクレール」のオーナーシェフほか、7ブランドを展開中。
 
●06年4月号   
 
辻口博啓(上)
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自分にしか作れないものを


初めて知った人はみな驚くが、フランスにはショートケーキがない。
日本では昔から大人気の、定番中の定番ケーキは、なんと日本生まれだったのである。
だから、フランスで本格的な菓子修業をしたパティシエたちは、日本で自分の店を始める時、ショートケーキを出すか出すまいか、必ず悩むことになる。

辻口シェフもやっぱり一度は迷った。
が、そんなころに高校時代の恩師がしてくれたのが、文化の違いの話。
それを聞いて、気持ちがスッとラクになった。

「どんなにフランスを知っても、我々はフランス人にはなれないし、日本にはまだまだいいものが隠れている。“おいしい”というのは世界共通のキーワードなのだから、日本の 風土で自分にしか作れないケーキを出そう。そう決めたんです」

衝撃的だったおいしさ


それ以前から、辻口シェフにとってショートケーキは特別な食べ物でもあった。
和菓子屋の長男として育った彼は、いずれは和菓子職人になって店を継ぐつもりでいたが、小学生の時、友だちの誕生会で生まれて初めてショートケーキを食べた。

「衝撃的でした。生クリームといい、ふわっとしたスポンジ、イチゴの酸味といい、世の中にはこんなにおいしいものが存在するんだって思った」

まさにこれがきっかけとなって、彼はパティシエへの道をひた走ることになる。
彼にとってのショートケーキは人生を決めた原点でもあったのだ。

彼は、そんなケーキのどこに自分だけのオリジナリティーを打ち出したのか。
まずはスポンジの間の、生クリームの層とは別に、クレーム・パティシェール(カスタードクリーム)の層をはさむことを考えつき、軽さとコクのメリハリが生まれた。
そして生クリームの中には酸味のしっかりしたイチゴ。
極めつけは、卵黄比率を高くしてぐっと軟らかさを増したスポンジだった。
こうして、誰もが知っているケーキでありながら、どこにもなかったケーキ「セゾン・ド・ガトー」が完成した。

空気を取り込むケーキ

和菓子が味を凝縮して、空気を抜き去る作業なら、ケーキの場合は全く逆の作業だという。
いかにしてうまく空気を取り込むか。
さらにその日の天候や、素材の目に見えない変化を感じとりながら作業していき、初めておいしいケーキとなる。
一見シンプルに見えるショートケーキだが、一つ一つの作業は単純でも、すべてをクリアしなければなかなかおいしくならない。
このケーキの難しさは、まさにそんな点だともいう。

「常においしいケーキを作り、できたてを出す。この気持ちが常にぶれないようにしていたいですね」

実にシンプルなセオリーであるが、これは、ショートケーキ同様、辻口シェフの原点で、そしてものづくりの原点ではないかと思うのだ。

●食べてみました
スポンジは黄色みが強く、しかもなんてきめ細やかなんだろう。フォークを入れると下まで沈むほど軟らかく、食べると口の中でほろっと溶け崩れた。どちらか といえば軽めの生クリームにイチゴの酸味が映え、下方のカスタードクリーム層がなんともニクイ。やさしさとコクを同時に楽しめて しまう。ああ今日も幸せ。 セゾン・ド・ガトー399円

●お取り寄せ情報
ふわっとした食感と口どけのよさで人 気上昇中のスフレ菓子。食べやすい一口 サイズ。チーズ味、マロン味、さつま芋味の3種類詰め合わせ。店頭ではバラでも買える。賞味期限は冷蔵で3日間。 ロンドゥ詰め合わせ/12個入り1995円 (消費税・箱代込み、送料別)
※スイーツの価格その他の情報は、掲載時のものですので、変更になっている可能性があります。 おそれいりますが、直接お店にお問い合わせください。
●パティスリー モンサンクレール
東京都目黒区自由が丘2-22-4
Tel:03-3718-5200  
Fax:03-3718-7377
〔営〕11:00〜19:00
(サロン:カウンター7席11:00〜17:30L.O.)
〔休〕水曜日、第3火曜日
http://www.ms-clair.co.jp/

撮影:岡山寛司  企画・取材・文:谷 あつこ(at food食プランナー)
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